BIZSPO INTERVIEW BORDERLESS

インタビュー

04
case

特別編:開発者インタビュー

誰よりも
“ファッションが好き”
その想いこそが
商品づくりの原点

2026.3.26

小林 隆

TAKASHI KOBAYASHI

PROFILE

小林 隆

株式会社AOKI ORIHICA商品構成部・マネージャー

1975年2月生まれ。1998年度入社。1998年から2000年まで「AOKI」店舗で店舗業務を経験、2000年から「スーツダイレクト」を経て、「ORIHICA」で店長業務を行う。2005年度から「ORIHICA」商品部へ異動。現在はジャケット・スラックスのMDとして企画から販売戦略までを担当している。ゴルフ歴は約10年。月1回ラウンドし、ベストスコアは約120。

新たな可能性を求めて
店舗経験から始まった商品づくり

「入社当初は店舗でした。AOKIの店舗で3年ほど働き、副店長なども経験しました。その後、スーツダイレクトという業態の公募があって、自分から応募して異動しました。スーツダイレクトは、現在のORIHICAにつながるブランドの前身となる業態。そこで約3年の経験を積み、その後ORIHICAとしてブランドがスタートする流れを現場で経験してきました。

お客様の声を直接聞く機会が多くて、『こんな商品があったらいいのに』という声をたくさん伺いました。そこから商品開発に興味を持つようになりました。その後、縁があって商品部へ異動。

最初は靴やベルトなどの雑貨を担当し、20年の商品経験があるからこそ見えることを自分の武器に、現在はジャケット、スラックス、カジュアルインナーなど幅広い商品を担当し、新たなカテゴリーの成長に取り組んでいます。商品部には20年近くいるので、メーカー様とのやり取りや商品開発の流れは大きく変わりません。扱う品種がジャケットとスラックスがメインになった、という感覚ですね。

働き方が変化する中で、スーツの役割も変わりつつある。最近はジャケットとスラックスを組み合わせて着るスタイルが増えています。働き方が変わった今、このカテゴリーは伸びしろがあると思っています。だからこそ、やりがいを感じている。任せていただけるのは光栄です」

ビジネスとゴルフをシームレスにつなぐ
BIZSPOウェアの
開発秘話

「BIZSPOは2024年春にスタートしたカテゴリーで、最初は“スポーツもできるぐらい快適な服”という発想から始まりました。その中で、ゴルフに合うのではないかという話になったんです。開発メンバーの多くはゴルフ経験者ではなかったため、まず“ゴルフウェアとして何がいいのか”を理解するところからでした。実際に打ちっぱなしに行って、ゴルファーの服装や動きを見たりもしました。

現場での観察やリサーチを重ねながら、“ビジネスでも使えるゴルフウェア”というコンセプトが形になっていったBIZSPOの最大の特徴はストレッチ性能です。スポーツウェアなので、まず動きやすさが重要。特にストレッチ性にはかなりこだわりました。

しかし、ただ伸びれば良いわけではない。伸びるだけだと膝が出たり、形が崩れてしまいます。だから“戻る力”も重要なんです。一般的なストレッチ素材は10%伸びればストレッチ素材と呼ばれますが、しかしBIZSPOは約50%のストレッチ性を実現。さらに回復率は通常90%のところを、96%という高水準を実現しました。かなり伸びるのに、しっかり元に戻る。そこを実現するために、何度も試作を重ねました」

「通常、スーツやジャケットには“織物”生地が使われるのですが、BIZSPOでは“編み物”ニット素材生地を採用しています。ストレッチ性のあるニットはキックバックも強く、軽さも最大限出すためです。織物だとここまで伸びません。ただし、ニット素材には課題もありました。

柔らかくなりすぎて、ビジネスウェアとしての“きちんと感”が出にくいんです。そこで編み方や糸の構造を工夫しながら、ドレス感とストレッチ性を両立させました。ビジネスでも着られるニット素材を作る、というのが一番難しい部分でしたね。

今季は、プリントでデニム見えするジャケットも発売されています。ベージュ染めとグレー染めのベースの生布の上に、デニム調のカルゼ柄をプリントしてあり、スポーティさをクラシックなアイテムにのせた、いまっぽいムードを楽しみながら着こなしていただけます」

細部まで妥協せず
スーツ工場で作る意味

「BIZSPOのジャケットやパンツは、スーツを縫製する工場で作られています。一般的なカジュアル工場よりも、工程数が多いんです。とくに重要になってくるのがアイロンプレス工程です。

ジャケットなら、肩、見頃、袖などパーツごとに丁寧にプレスをしてから縫製します。ひと手間もふた手間もかかるこの工程によって、体に沿う立体的な丸みのあるシルエットが実現します。工程を省けばコストは下がる。しかしそれでは大切にしている“きちんと感”が失われてしまう。品質は絶対に落としたくない。そこには強くこだわり続けていますね。

価格と品質のバランスって大事ですが、BIZSPOの特徴のひとつが価格にあります。高機能素材でありながら比較的手に取りやすい価格帯で展開しています。それはやはり、ORIHICAだけで100数店舗あるという、大量生産できるスケールメリットは大きいですね。すべて自社で、企画、制作から、販売までを担っている。ゴルフショップにあるゴルフブランドのウェアは、高価格帯が多いので、そこに勝つための努力をしています。

さらに、必要な機能だけを残すことでコストを調整する。本当にお客様に必要な機能かどうかを見極めて、不要なものは削る。そうやってバランスを取っています」

「ジャケットのシルエットの美しさは、ハンガーにかけてある姿で、一目でわかります。袖が前に出る状態が理想的。丸みがなくペタンコだったり、横を向いたり広がっているなど、吊り姿が悪いと、検品に通りません。上質なものだけが製品になります。

パンツのシルエットにも、一切の妥協はしません。膝から裾までほどよくしぼってあり、すっきりとスマートに見えるつくりになっています。ストレートや太いシルエットだと、ビジネスには不向きだからです。太ももまわりの幅“わたり”も、通常のORIHICA製品よりも削ってあり、より美脚ラインに仕上がるよう、すっきりさにこだわっています。細くしても、快適な着心地は変わらない仕様になっています

「デイリーに、ゴルフに着る上で欠かせない、機能性も充実させています。おうちで洗ったあとに乾きやすく、型崩れしにくい、お手入れ簡単な素材感はもちろん、脇には消臭テープを採用し、通気性のよいメッシュにしています。

静電気防止テープを袖に搭載するなど、テクノロジーを活用したディテールを、追求し続けているので、毎シーズン進化しています」

“未来を読む”MDという仕事の
息抜き方法とは

「商品企画は1年以上前から始まります。1年後に売れるかどうかを考えて商品構成を決めます。そこが一番難しいですね。そのため、日常生活の中でも常にアンテナを張っているし、休みの日もお店を見に行ったりします。百貨店やスポーツショップなどを見て、“来年これが流行しそうだな”と常に考えています。

仕事の合間のリフレッシュ方法はサウナです。サウナに入ってぼーっとしていると、アイデアが浮かぶこともあり、忙しい商品開発の中で、思考を整理する大切な時間になっています。やっぱり自分はファッションが大好き。服づくりが楽しい原点なのかもしれません。

毎シーズン結構な量の服を買っています。買っても全部着るわけじゃないんですけどね(笑)。ただただ、ファッションが好きなんです。人と違うオシャレがしたい、オシャレなひとに認められたい。ファッションは自分を表現するもののひとつだと思います」

仕事をもっと楽しくする服
BIZSPOの目指す未来

「仕事服って、どうしても堅いイメージがありますよね。でも、もっと楽しんでいいと思うんです。一週間7日のうち、5日は仕事服を着る機会がある。うちの会社は月曜会議が多いので、スーツ着用デーだったりします。

ビジネスでの最低限のドレスコードはあっても、ちょっと枠を外して新しい服を着ると、ワクワクして気分が上がりますよね。それが仕事のパフォーマンスにもつながると思っています。

服の楽しさの扉を開けることで、仕事も人生ももっと豊かになる。ビジネス、スポーツ、そして日常。その境界を越えるボーダーレスなビジカジ服として、BIZSPOは今後も可能性が広がっていくと信じています」

撮影/竹田翔

取材・文/濱口眞夕子(SEASTARS Inc.)

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