Director's Voice ORIHICA表参道クリエイティブ・ディレクターサリーム・ダロンヴィルからのメッセージ

Voice.24 どのようにイギリス人は日本で成功を収めるか。


外資系企業が日本に続々と進出し、話題となっている昨今。日本にしっくりと馴染んでいく企業と、撤退を余儀なくされていく企業があります。その違いはいったい何なのか。外国人が日本において成功を収める秘訣について、オリヒカのクリエイティブディレクター、サリーム・ダロンヴィルと、英国人インテリアアーキテクト、スティーブ・リドバリーに語り合ってもらいました。

謙虚、主張、信頼
日本のビジネスシーンで学んだこと

Saleem d'Aronville(以下Saleem)「最近の日本は不景気で、コンサバになりがちな傾向にあるよね。でも海外はそんな日本に注目していて、どんどん進出してきてる。君も僕もその一人であるわけだけど、日本のビジネスシーンで、ヨーロッパと違うと君が感じたのはどんなことだい?」

Steve Lidbury(以下Steve)「ヨーロッパと違って、日本はプロジェクトを詰める段階で計画を綿密に練っているので、実行に移してからが早い!これがとても効率的で、しかも正確なんだ。」

Saleem「そうだね。ヨーロッパでは、1つのプロジェクトに対して1人の人間がヘッドとなり、決定権はその人にある。だから決断は早いけど、それを実行に移してから試行錯誤するので、結局そこからが長いんだ。」

Steve「ヨーロッパとは時間のかけ方が完全に逆だよね。1つのことをやろうとするとき、日本ではたくさんの人にコンセンサスを取らなきゃいけないから、即行動には移せない。日本でのこの常識に慣れるまでは、正直ちょっとイライラしちゃったよ(笑)」

Saleem「日本人とビジネスしてどう感じた?」

Steve「ファンタスティックだったよ!日本人はマナーがいいし、常に一生懸命で、よく働くんだ。明確なアイディアを持って、一丸となってそれに向かっていくところは感心する。」

Saleem「確かにそうだね。ヨーロッパ人だと"OK"のボーダーラインはだいたい70%くらいだけど、彼らにとっての"OK"は100%以外にありえない。仕事に忠誠心があって真剣に取り組むスタンスは、そこにあると思う。じゃあビジネスの中で、日本人から学んだことといえば?」

Steve「一番印象的なのは、コミュニケーション方法の違いかな。例えば、日本では1つのプランに対して必ず複数の道を用意する。『こうだったらこうしよう』っていうシュミレーションを常にしているんだ。ヨーロッパでは1つの道だけでなんとかしようとするからね。そんな考えがベースにあるから、何か意見を主張したいときでも謙虚にしなくちゃいけない。1つの意見だけを大々的に主張して通るってことは、日本の文化ではほとんどありえないんだよ。主張するときにも、いろんな道を用意した上で一番押したいことを少しだけ強くアピールするのがベストだね。あとは、相手の意見に辛抱強く耳を貸すこと。そして頭から否定しないこと。それがどんなに無駄だと思ってもね(笑)そこから信頼を得ることができるんだ。」

Saleem 「ヨーロッパにはないやり方だといえるね。いろんな角度から検証して、戦略的にビジネスを進める日本人のやり方はとってもグローバルだ。このやり方、ヨーロッパで展開したら成功するだろうね。じゃあ、そんな日本人を相手に、全く違う文化のヨーロッパ人が日本で成功するための秘訣って何だといえる?」

Steve「いい日本人パートナー(アシスタントやスタッフを含め)を持つことだよ。ヨーロッパやアメリカの文化だと"YES"か"NO"しかない。でも、日本にはいわゆる"グレーゾーン"という曖昧な範囲があるよね。これをちゃんと把握して、上手に活かすためにパートナーが必要なんだ。根回しや落としどころを最初に決めておくとか、提案するプランの中にわざとグレーゾーンのものを混ぜておくとか。こういう日本の文化を理解し、実行することで、少しずつ信頼を積み重ねていったんだ。」

Saleem「日本人の信頼を得られるとどうなる?」

Steve「ヨーロッパでは1つのプロジェクトが終われば、それで終了ってことがほとんど。日本は違って、信頼を重ねていくと、最初は小さな仕事だったものがのちのち大きくなったりして、1つのクライアントと長く続くことが多いんだ。これが日本で成功する鍵だと思うよ。」

Saleem「今、日本に進出しているアメリカやヨーロッパの会社は、自国のやり方をそのまま日本に持ち込んでいるところが多いと思わないかい?でも君のように、日本をしっかりと理解し、学ぶことでしか日本での成功はありえないと私も思う。しかも、日本のやり方をアメリカやヨーロッパで展開しても成功するんじゃないかな。だから日本でのビジネスは、グローバルで価値があるといえるんだね。」

スティーブ・リドバリー プロフィール
1977年ロンドン東部ダグナム生まれ。英レイベンズボーン・カレッジ・オブ・デザイン・アンド・コミュニケーション在籍中に、IDDA主催のコンペティションで初の入賞。その後、バーミンガム大学では修士号を取得。'05年に東京オフィスを構えて以来、日本企業からのオファーで様々なプロジェクトに参加。

Backnumber

英国人インテリアアーキテクト
スティーブ・リドバリー

サリーム・ダロンヴィル


サリーム・ダロンヴィル

英マンチェスター大学卒業後、マルベリー社やマッキントッシュ社でクリエイティブディレクターを歴任。その後、英国貿易産業省のエクスポートプロモーターとして、数多くの英国人デザイナーや英国ブランドの日本進出をサポート。2003年よりオリヒカのクリエイティブディレクターに就任。

Director's Voice ORIHICA表参道クリエイティブ・ディレクターサリーム・ダロンヴィルからのメッセージ

Voice.24 どのようにイギリス人は日本で成功を収めるか。


外資系企業が日本に続々と進出し、話題となっている昨今。日本にしっくりと馴染んでいく企業と、撤退を余儀なくされていく企業があります。その違いはいったい何なのか。外国人が日本において成功を収める秘訣について、オリヒカのクリエイティブディレクター、サリーム・ダロンヴィルと、英国人インテリアアーキテクト、スティーブ・リドバリーに語り合ってもらいました。

謙虚、主張、信頼
日本のビジネスシーンで学んだこと

Saleem d'Aronville(以下Saleem)「最近の日本は不景気で、コンサバになりがちな傾向にあるよね。でも海外はそんな日本に注目していて、どんどん進出してきてる。君も僕もその一人であるわけだけど、日本のビジネスシーンで、ヨーロッパと違うと君が感じたのはどんなことだい?」

Steve Lidbury(以下Steve)「ヨーロッパと違って、日本はプロジェクトを詰める段階で計画を綿密に練っているので、実行に移してからが早い!これがとても効率的で、しかも正確なんだ。」

Saleem「そうだね。ヨーロッパでは、1つのプロジェクトに対して1人の人間がヘッドとなり、決定権はその人にある。だから決断は早いけど、それを実行に移してから試行錯誤するので、結局そこからが長いんだ。」

Steve「ヨーロッパとは時間のかけ方が完全に逆だよね。1つのことをやろうとするとき、日本ではたくさんの人にコンセンサスを取らなきゃいけないから、即行動には移せない。日本でのこの常識に慣れるまでは、正直ちょっとイライラしちゃったよ(笑)」

Saleem「日本人とビジネスしてどう感じた?」

Steve「ファンタスティックだったよ!日本人はマナーがいいし、常に一生懸命で、よく働くんだ。明確なアイディアを持って、一丸となってそれに向かっていくところは感心する。」

Saleem「確かにそうだね。ヨーロッパ人だと"OK"のボーダーラインはだいたい70%くらいだけど、彼らにとっての"OK"は100%以外にありえない。仕事に忠誠心があって真剣に取り組むスタンスは、そこにあると思う。じゃあビジネスの中で、日本人から学んだことといえば?」

Steve「一番印象的なのは、コミュニケーション方法の違いかな。例えば、日本では1つのプランに対して必ず複数の道を用意する。『こうだったらこうしよう』っていうシュミレーションを常にしているんだ。ヨーロッパでは1つの道だけでなんとかしようとするからね。そんな考えがベースにあるから、何か意見を主張したいときでも謙虚にしなくちゃいけない。1つの意見だけを大々的に主張して通るってことは、日本の文化ではほとんどありえないんだよ。主張するときにも、いろんな道を用意した上で一番押したいことを少しだけ強くアピールするのがベストだね。あとは、相手の意見に辛抱強く耳を貸すこと。そして頭から否定しないこと。それがどんなに無駄だと思ってもね(笑)そこから信頼を得ることができるんだ。」

Saleem 「ヨーロッパにはないやり方だといえるね。いろんな角度から検証して、戦略的にビジネスを進める日本人のやり方はとってもグローバルだ。このやり方、ヨーロッパで展開したら成功するだろうね。じゃあ、そんな日本人を相手に、全く違う文化のヨーロッパ人が日本で成功するための秘訣って何だといえる?」

Steve「いい日本人パートナー(アシスタントやスタッフを含め)を持つことだよ。ヨーロッパやアメリカの文化だと"YES"か"NO"しかない。でも、日本にはいわゆる"グレーゾーン"という曖昧な範囲があるよね。これをちゃんと把握して、上手に活かすためにパートナーが必要なんだ。根回しや落としどころを最初に決めておくとか、提案するプランの中にわざとグレーゾーンのものを混ぜておくとか。こういう日本の文化を理解し、実行することで、少しずつ信頼を積み重ねていったんだ。」

Saleem「日本人の信頼を得られるとどうなる?」

Steve「ヨーロッパでは1つのプロジェクトが終われば、それで終了ってことがほとんど。日本は違って、信頼を重ねていくと、最初は小さな仕事だったものがのちのち大きくなったりして、1つのクライアントと長く続くことが多いんだ。これが日本で成功する鍵だと思うよ。」

Saleem「今、日本に進出しているアメリカやヨーロッパの会社は、自国のやり方をそのまま日本に持ち込んでいるところが多いと思わないかい?でも君のように、日本をしっかりと理解し、学ぶことでしか日本での成功はありえないと私も思う。しかも、日本のやり方をアメリカやヨーロッパで展開しても成功するんじゃないかな。だから日本でのビジネスは、グローバルで価値があるといえるんだね。」

スティーブ・リドバリー プロフィール
1977年ロンドン東部ダグナム生まれ。英レイベンズボーン・カレッジ・オブ・デザイン・アンド・コミュニケーション在籍中に、IDDA主催のコンペティションで初の入賞。その後、バーミンガム大学では修士号を取得。'05年に東京オフィスを構えて以来、日本企業からのオファーで様々なプロジェクトに参加。

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英国人インテリアアーキテクト
スティーブ・リドバリー

サリーム・ダロンヴィル


サリーム・ダロンヴィル

英マンチェスター大学卒業後、マルベリー社やマッキントッシュ社でクリエイティブディレクターを歴任。その後、英国貿易産業省のエクスポートプロモーターとして、数多くの英国人デザイナーや英国ブランドの日本進出をサポート。2003年よりオリヒカのクリエイティブディレクターに就任。